クールな社長の耽溺ジェラシー
現場の確認を終えると、新野さんとはその場で別れた。
私が合流してからのふたりはとても淡々としていて、無駄話もなく手だけを動かしていた。
作業をする新野さんの横顔を見ると、頭をさげていた姿が浮かんできて鼓動が速くなった。
お礼が言いたい。でも、盗み聞きしていたことがバレてしまう。だから、せめて新野さんに任せきりにならないようにしたい。
「あのっ、正司さん……」
車へ戻る最中、荷物を抱えて前を歩く正司さんに声をかけた。
「ん? なにかな」
ゆるりと振り返ったメガネの奥の瞳は穏やかだったけれど、どこか不安気に揺らいでいるようにも見えた。
「橋のライトアップ……受けてください」
気持ちを伝えたくて、射抜くようにじっと見つめると、正司さんは一瞬目を瞬かせた。それから困ったように口元をゆるめる。
「それ、新野くんが僕にお願いしてたから言ってる?」
「いえ、そうじゃなくて…………え?」
横に振ろうとした首が止まる。正司さんの言葉は、私が盗み聞きしていたことを知っているみたいだった。
「僕たちが話しているとき、高塔さんが隠れてたの気づいてたよ」
「う、うそ……」
間抜けに口を開けていると、正司さんがもうほとんど傾いた太陽を指差した。