十人の住人
22歳 3月1日①

良樹から電話がかかってきた。

「もしもし?!」

私は勢いよく電話に出た。

「もしもし~?」

陽気な声がかえってきた。
拍子抜けしてしまい、なにも言えなかった。

それと同時に安心した。
生きていた。
嬉しかった、生きて帰ってきてくれたことが。
悔しかった、なにもできなかったことが。

その思いを話すのはさすがに今日ではないかなと思ったが、彼が

「心配したでしょ?聞きたいこといって、話したいこと伝えて、ちゃんと受け止めるから。」

といったので、話すことにした。

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