生徒だけど寮母やります!3

全員の箸を持つ手が止まる


「それで、僕は学校に戻って来られるの?」

相変わらず重要なことを淡々と尋ねる爽馬


本人よりも不安そうな顔をした咲夜が、テーブルに身を乗り出した


「爽馬は、多分出席日数が少し足りない。進級するためには一年間のうち3分の2の出席が必要なんだろ。昨年度は2月までいたから2年生にはなれるとして、問題は来年度だ。今復学しても次の春、3年生になれるのか......」


切迫した咲夜を暑苦しいと言わんばかりに、マナはひらひらと手を振る

「あーその通り、その通りなんだけど、まず小高君がここの生徒に戻れるのかどうかを聞きなさいよ」

「えっ、戻れないんですか」


まさかスタート地点から問題があるとは思わず市河が表情を固める


マナはそんな市河を鋭い目つきで見た


「妖術結社=小高公俊(きみとし)と決別した今の小高君の保護者は、兄の隆馬(りゅうま)と、あなたのお母さんの紫月さん。

隆馬は確かに成人だし小高君の保護者にはなれるんだけど、とはいえ妖術結社にずっといた彼は世間知らずで、今は家も仕事もなく市河家に身を寄せているからね。小高君、今後もしばらくは兄弟ともども市河家のご厚意に甘えてお世話になりなさい」



景はマナの言葉を聞きながら、記憶に新しい市河家のみんなの顔を思い浮かべた


無茶をした景たちを助けてくれた市河の母、紫月


在学中から爽馬のことを気にかけてくれていた兄の快


景は知らないが、実は姉のハルはライの頼みで千里眼を使って逃走中の美音の居場所を突き止めてくれた

< 78 / 115 >

この作品をシェア

pagetop