生徒だけど寮母やります!3
重い雰囲気の中、千加が片手をあげる
「いやでもさ、小高爽馬がのうのうとこの学校で生活してる時点で、学校側に全部筒抜けで、少なくとも小高爽馬の味方についてることはバレバレじゃん。卒業まで隠居するわけ?」
最近初めて会った先輩の名を連呼しつつ鋭い発言をする
「いや、もうここの生徒にはだいぶ、帰ってきたことバレてると思うけどね......」
隣に座る千冬が苦笑いしてボソリとこぼした
相変わらずサラリと厳しいことを言ってくれる2人である
「イクラちゃんたちはそんなことしか言わんな!正論だよ正論!」
顔を歪めて悔しそうな咲夜
「落ち着いて咲夜」
景はそう声をかけつつマナをチラッと伺う
教師として、あまり突かれたくなかったところらしい
その表情
険しい
「そ、そうよ。だから学校側は......」
「「学校側は......?」」
「なにも知らないふりをして、しらばっくれることにしたわ」
「「「.........」」」
堂々とした宣言とは裏腹に、あまりにしょうもない決断に全員は言葉を失う
彼女のさっきまでの剣幕はどこ行った状態だ
「だっせ」
冷めきったライの苦笑いに
「うそーーん!」
咲夜の悲痛な叫びが重なる
まるでムンクの叫びのように頬に両手を当てた咲夜は、テーブル反対側に座る結斗を見た
「俺らの学校が、俺らの学校が、そんな情けないこと......会長ぉぉお!」
「いや......会長の管轄じゃないです」
俺に言われても、と首を振る結斗
彼は予想外の回答に戸惑いつつ
「いや.........でも、まぁなんかあった時それが一番安全なのもまぁ分からなくもないんだけど」
と続けた
「結斗は大人の事情がわかる男だね」
景は感心する
「ありがとう、景ちゃん。ライとは違うよ」
「.........」
ライの鋭い視線を受けながら、結斗は「と、まぁそういうことですよね」とマナを見る
マナは「えぇ、それが一番安全なの。悪いわねみんな」と頷いた
それが一番
結果的に、爽馬を含め全ての生徒を守るということだ
誰か特定の生徒にだけ肩入れせず
かといって見捨てもできない
学校の選択はおそらく正しいのだろうと、みんなはそれ以上何も言えなかった