ダブル~私が選ぶのはどっち~
「また会えて良かったよ。ありがとな、吉川。」

草野主任はいつもの笑い声でそう言った。

矢田君が横で安心した様な笑顔を見せた。

私は真っ直ぐに草野主任の目を見る。

セフレという関係だったけど、草野主任にはたくさんの事を教えてもらった。

ある意味、かけがえのない人だった。

この人に出会えてよかった。

「本当にお世話になりました。私は草野主任をずっと尊敬していましたから。」

私のその言葉に少し複雑な表情を残して、草野主任と矢田君は帰って行った。

「吉川は幸せな奴だな。」

林主任はそう言って、私の肩をポンとたたいた。

「あんなに吉川の事を思っている男は居ないだろう。勿体ない事をしたな。」

林主任の言葉に、私はもう少しで涙を流すところだった。

そしてそっと自分の首元に手をやった。

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