ダブル~私が選ぶのはどっち~
「だから入社して、琴乃さんと草野主任の距離の近さにすごく驚いた。草野主任は会社の琴乃さんを知っていて…、俺はベッドの中の琴乃さんしか知らないんだなって自信を無くしていた。」

私は慎の腰に手を回す。

「実はね、慎にプロポーズされる少し前に、草野主任にも結婚しようって言われたの。」

慎は驚いた表情を私に向けた。

「だからあの時の転勤の話は私にとっては渡りに船だったのよ。私は二人に何も返事しないで、こちらに来たわ。」

慎はもっと話を聞きたいようで、それを促すような表情をする。

「それで?」

「草野主任は私に一方的に自分を置いて行ったと言ったわ。でも慎は違う捉え方をしてくれたのね。」

「俺はそんな立派な男じゃないからね。自分の力不足をすごく感じた。」

そうなのだ。

草野主任は私を追いかけ、私をそばにおこうとする。

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