ダブル～私が選ぶのはどっち～

慎は私の目を見つめながら、ふっと笑った。

「それは一番うれしい答えだけど…。」

慎の手が私の両肩に乗って、私達は少し距離を取って見つめ合う。

「いつも琴乃さんには驚かされるね。俺が思っている返事をもらった事がないような気がする。」

慎はクスクス笑っている。

「琴乃さんから仕事を取りあげるつもりはないよ。どんな形であっても、琴乃さんと気持ちが通じ合っていたらいいんだ。ずっとそう思っていた。」

「でも矢田君は石原さんに仕事を辞めて結婚しようって言ったんだよ。」

私は慎にそう聞いた。

「それは矢田たちの話だろう。俺達はそんなやわな関係じゃないと思っているんだけど…、そう思っているのは俺だけ？」

慎は私の額にキスを落とした。

「草野主任とのセフレ関係だって、本社への転勤だって、連絡が取れなくなった事だって、どこかで琴乃さんは最後には俺の所に戻って来てくれるという変な確信があったんだ。何でだろうね。」