ダブル~私が選ぶのはどっち~
そんな石原さんの声に送られて、私は会社を飛び出した。

外で林主任が待っていてくれた。

「今度の支社は本当の意味で新規開拓の土地になる。吉川には大変な事が多くなると思う。でもそれが分かっていて、上層部も吉川に任せる事を決めたんだ。すごい事だな。」

そして林主任は話を続けた。

「実は草野の名が一番に挙がったらしい。しかしその前に本社希望を出していたために見送られた。」

私は思わず動きを止めた。

「草野はもっと大きな役職で、本社へ追々迎えようという事になったんだ。草野の仕事も認められつつあるようだ。」

林主任はニッコリと笑った。

「将来の幹部候補生って事だな。」

草野主任の転勤はそんなに遠い話ではないだろう。

だからその時には、私は本社に居ない方が良い。

良かった…、素直に私はそう思った。

< 136 / 193 >

この作品をシェア

pagetop