ダブル~私が選ぶのはどっち~
「では遠慮なく頂き…、ん?」

石原さんの顔を見ると、その表情はすごく固い。

「どうしたの?」

私は首をかしげながら聞いた。

「吉川さん、今はちょうど転勤の内示が出る頃ですよね…。」

石原さんは憂鬱そうに言葉を出す。

「そうだね。実は…。」

私が言いかけた言葉を、珍しく石原さんは遮った。

「どうも凌平に内示が出たらしいんですけど…。」

「あら、結婚するんじゃなかったの?」

私は思わず言ってしまってから、手で口を押えた。

そんな私を石原さんはチラリと見た。

「どこに行くか教えてくれないんです。上手にはぐらかされてしまって…。なのにプロポーズの返事だけは欲しいって強引なんですよ。」

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