ダブル~私が選ぶのはどっち~
全く納得がいかないといった表情が隠せない石原さん。

でも確かに矢田君も4年目を迎えたのだから、キャリアアップのためにも転勤の話が出るのも当然だ。

その代わり、石原さんは本社で事務に専念しているからその心配はない。

「どこに転勤になっても、結婚するのなら私が仕事を辞めなくてはならないじゃないですか。そんな私の都合は全く聞いてくれないんですよ。ひどいと思いませんか?」

矢田君もなかなか強引なんだな。

「矢田君は何を考えているんだろうね。そんなに物分かりが悪いとは思っていなかったんだけど。」

私は指導係をしていた頃の矢田君に思いを巡らす。

「だから言ってやったんです。私は凌平と結婚しないって。」

その勢いのまま、石原さんはビール缶を開けた。

そして一気に飲み干す。

「気持ちは分かるけど、そんな飲み方は良くないよ。」

私はとりあえず石原さんをなだめるしかない。

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