ダブル~私が選ぶのはどっち~
「そうしたら凌平は何て言ったと思います?転勤の前にお前の実家に行って挨拶するから、日にちを設定しておけって言うんですよ。」

すでに石原さんの怒りは、私には抑えられないかもしれない…。

「あいつは勝手なんです。」

「じゃあ、私みたいにスマホの番号ごと変える?」

私のそんな言葉に、石原さんはきょとんとした。

そのタイミングで私はビールを一口飲んだ。

「だってもう結婚しないんでしょ?だったら連絡を取る必要もないじゃない。」

「でも…。」

石原さんはさっきまでの勢いをなくしている。

「私にはそこまでの覚悟はあったんだけどな。」

私はそんな事をわざと言ってみる。

でもその時はそれが私の出来る精一杯だったのだ。

「何か考えがあるんじゃないのかな。矢田君が結婚しようとしている石原さんの事を全く無視するような人間には思えないんだけどな。」

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