ダブル~私が選ぶのはどっち~
「あれ、いい匂いがしていますね。」

石原さんがそんな事を言いながら、家に入って来た。

「今日はちゃんと食べよう。」

私の言葉に、石原さんがうなずく。

「いただきます。」

二人そろって、手を合わせる。

「そう言えば、あれからすぐに慎から電話がかかって来たよ。」

私の苦笑いに、石原さんはふわっと笑った。

「だって、吉川さんがちゃんと電話するか疑わしかったんですもん。」

「慎がすごく慌てていたわ。私が驚いた。」

石原さんはとても楽しそうに私の顔を覗き込んだ。

「それで…、庄司君とはどうなりました?」

私は一瞬、近づいてくる石原さんの顔を避ける。

「ねぇ、教えて下さいよ、吉川さん。」

< 162 / 193 >

この作品をシェア

pagetop