ダブル~私が選ぶのはどっち~
頭では分かっているんだけれど…。

二人で社用車に乗り込む。

草野主任以外の人と動く時は、私は助手席に座る。

しかし草野主任は私に運転をさせて、自分は助手席に座る。

これは草野主任が指導係の時から、ある日を境に全く変わらない。

だから草野主任は楽をしたい為、私を同行させることが多い。

…というのがうちの課での暗黙の了解になっている。

「こういう既成事実を作っておくと、琴乃と同行しやすい。」

社用車で二人きりになると、すぐに下の名前で呼ばれる。

「しかも琴乃は本当に運転が上手だから安心できる。他の若い奴の運転なんて本当に危なっかしいんだぞ。ハラハラしながら助手席に乗るくらいなら、自分で運転した方がマシだ。」

早速、草野主任は助手席でくつろいでいる。

「…琴乃。新人の奴の顔を見たよな。」

やっぱり草野主任はその事が気になるようだ。

< 18 / 193 >

この作品をシェア

pagetop