ダブル~私が選ぶのはどっち~
「俺の記憶が確かなら、琴乃がお世話している年下くんが混じっていたような気がしたんだが。」

分かっているくせに、そんな聞き方をする草野主任。

「そうみたいですね。」

私はあっさり答える。

「何か聞いていなかったのか?」

草野主任は不思議そうに私の横顔を見た。

「私達はそういう話はしないので。」

私は左右を確認するために、首を振る。

「当然、年下くんには俺の話もしているんだろう?」

「はい。だから草野主任が彼に気が付いたのなら、彼も草野主任の事は気が付いていると思います。」

すると草野主任はいつものように笑い出した。

「俺が琴乃と出掛けると言った時の奴の顔を見たか?あのポーカーフェイスが一瞬だけ崩れた瞬間を俺は見逃さなかったぞ。」

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