ダブル~私が選ぶのはどっち~
「仕事も忙しいのに、新人君を預かるのも大変よね。」

私は苦笑いをする。

「琴乃なら大丈夫よ。自分の担当だって少しずつ自分で増やしているじゃない。」

自分の事はさておき、和華はゆったり笑う。

そう、この業界の営業はどうしても女には不利な職種だ。

暗黙の了解で、男性営業マンが獲得してきた仕事を女性営業マンに引継ぎになるケースが多い。

どうしても新しい契約は、信頼関係等の諸々の事情で男性営業マンが結ぶことが前提だからだ。

それが私は運を持っているのか、このところ自分で契約を取っている。

もちろん草野主任に同行してもらうが、私を担当として取引会社が望んでくれたのだ。

「しかも取引会社から、今まで担当者変更を言われた事がないじゃない。すごいと思うよ。だから草野主任も新人たちに琴乃の事を仕事が出来るって言ったんじゃない。」

そう、女性の営業マンを担当としてつけるのを嫌う取引会社もある。

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