ダブル~私が選ぶのはどっち~
それから実の母を探したが、母はもう亡くなっていた。

この時から私は少し世間を冷静に見る部分と投げやりな部分を持ち合わせた人間になったように思う。

いや、自分が選んだ選択に自信を持てない臆病者なのだ。

あの時、父を選んだ自分の選択が正したかったのか、それをずっと抱え込んでいる。

仕事など与えられたものは冷静にきっちりとこなす。

しかし自分の事はなかなか決断できないのだ。

草野主任と慎に対して、こういう関係を続けているのもそういう事なのかもしれない。

私達がオフィスへ戻る。

「庄司君、同行してもらおうかな。」

和華がそう声を掛けると、慎は和華のデスクにやって来た。

そして隣のデスクに座っている私をチラリと見た。

そこへ昼を済ました矢田君もやって来た。

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