ダブル～私が選ぶのはどっち～

「吉川さん、この書類のチェックお願いします。」

すると和華が立ち上がった。

「矢田君、この席を使って。今から外出するから。」

和華が矢田君ににこりと笑う。

「ありがとうございます。」

矢田君は表情を崩さずに、和華に頭を下げた。

私は矢田君の書類に目を通す。

すると矢田君は和華のデスクの椅子を滑らせながら私の方に近づき、そばに座った。

慎の表情が一瞬変わったような気がした。

しかし慎は直ぐに何食わぬ表情に戻って、和華と共に出掛けて行った。

「ほぼ完璧かな。でもここだけ訂正させてもらうわね。この会社特有な表現なのよ。伝え忘れていたようね、ごめんなさい。」

私は赤ペンで一箇所訂正をする。

するとその間に、椅子に座ったまま矢田君はするすると更に私に近づいた。