ダブル~私が選ぶのはどっち~
私が矢田君を見ると、彼はニヤッと笑った。

「そう、でも私も忙しいから。今日だって残業はしていく予定だし。」

「それに俺との約束が先だしな。」

私と矢田君はその声の方を見る。

「吉川と打ち合わせを兼ねて食事に行く約束をしている。悪いな、新人君。」

草野主任はいつからそこに居たんだろう。

「そうでしたか。ではまた今度。」

不敵にも矢田君は草野主任に笑いかけた。

「はいはい、そういう話はあとでお願いします。二人とも仕事をして下さい。」

私はあからさまにムッとして、二人を交互に見た。

もう…、面倒くさいな。

私はふっと思う。

そして矢田君の書類を処理すると、別の仕事の指示を出した。

矢田君は複雑な顔をして、自分のデスクに戻って行った。

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