ダブル~私が選ぶのはどっち~
草野主任はさすがに大人だ。

あれからちゃんと公私の区別をきちんとつけている。

私は草野主任を人間としては尊敬している。

仕事中の草野主任はすべてに気が行き届いていて、今でもハッとさせられる時がある。

仕事を一から教わったという事もあるが、私はまだまだだと痛感する。

男としてはどうかと思うが…。

「どうした?吉川。」

私はいつの間にか草野主任の顔を眺めていたようだ。

「ええ、やっぱり仕事の出来る男はカッコいいなと思いまして。」

私は思っている事が、するっと口から出た。

「吉川、お前がそんな事を言うなんて珍しいな。」

想定外の私の言葉に、草野主任も少し戸惑っているようだ。

そりゃ、そうだ。

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