ダブル~私が選ぶのはどっち~
先日あんな事があった後なのだから。

「吉川、熱でもあるのか?」

私は思いきり首を横に振った。

「ご心配なく、私は正直なだけです。それと今日の予定ですが、午後から矢田君とあの見積りを提出して来ようと思っています。」

すると草野主任は優しい表情を見せた。

「そうだな。あれは早く相手先に持っていった方が良い。吉川ならきっと上手く話を運べるだろう。契約時には…。」

「分かっています。その時は同行よろしくお願いします。」

私はぺこりと頭を下げる。

草野主任は私のそんな様子を見届けると、とてもご機嫌そうに自分のデスクに戻って行った。

「ねぇ、草野主任とこないだのはけんかだったの?」

横から意地悪な顔をした和華が声を落として聞いてくる。

「どうして?」

「だって二人のいつもの仲直りじゃない。」

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