ダブル~私が選ぶのはどっち~
「大丈夫です。」

矢田君は自分のデスクで立ち上がった。

「じゃあ、正式な見積書と私達の資料としての見積りを2部用意してくれる?12時前にはここを出るから。」

私はパソコンから視線を離して、立っている矢田君に目を向ける。

「さっさと準備しないと間に合わないわよ。」

私の鋭い声に、ハッとして矢田君は慌てて座り直すと、自分のパソコンを覗き込んでいる。

「怖い指導係だな。」

草野主任は大声で笑っている。

いつもの雰囲気にオフィスも和む。

「私もそうやって指導されて来ましたから。」

私の一言に笑いが起こる。

「吉川は一言多い。」

そう言いながらも、草野主任はご機嫌だ。

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