ダブル~私が選ぶのはどっち~
私も出掛ける準備をしていると、矢田君が私のデスクにやって来た。

「念のため、内容のチェックをお願いします。」

こういう抜かりの無い所に、矢田君の優秀さを感じる。

私はざっと見積書に目を通し、草野主任に押印をもらいに行く。

「頑張ってこい、吉川。」

そして草野主任はこっそりと見積りにメモを挟んだ。

社用車に向かうまでに、私はそのメモを矢田君に分からないように確認する。

-こないだは悪かった。-

たったそれだけの言葉。

でも4年の年月を重ねてきた私には分かるその言葉の重み。

草野主任がこんな風に謝るのは本当に珍しい。

いや、初めてかもしれない。

さて、こんな正攻法で来た草野主任とどのように対峙するのか。

私は思案していた。

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