ダブル～私が選ぶのはどっち～

にこやかに相手の担当者、青木さんに迎えられた。

青木さんは50歳を迎えるベテランで、私もいろいろと教えられることも多い。

なかなかの曲者で、こういう新規の契約の見積りはすんなりとは通してくれない。

しかし一度納得してもらうと、その先は早い。

恐らく自社ではかなりの権限を持った優秀で信頼された社員なのだろう。

「へぇ～、ここを落として来たんですか。」

青木さんは我が意を得たりという表情をした。

「この部分は、今日同行している矢田から説明させていただきます。」

矢田君は私の横で少しの動揺を見せた。

私は矢田君に向かってうなずく。

「レポートを持ってきているでしょう。それを青木さんに説明して。」

矢田君がちゃんとその辺の事を心得ている事は分かっている。

すると矢田君は真っ直ぐ青木さんを見つめると、話し始めた。

時々青木さんも質問を投げかける。