ダブル～私が選ぶのはどっち～

「…よくわかりました。」

矢田君の言葉が切れると、即座に青木さんは言った。

そして青木さんはニッコリと笑いながら、私を見た。

「優秀な若者が入社されたんですね。頼もしい限りです。上には契約を前提でお伺いを立ててみます。」

私は立ち上がって、青木さんに頭を下げた。

「ありがとうございます。」

一瞬遅れて、矢田君も立ち上がって頭を下げる。

そこでにこやかに私達は別れた。

車に戻ると、助手席で大きく息を吐く矢田君。

さすがに緊張していたようだ。

「初めてにしては上出来よ。まだまだ甘い点は青木さんからの質問で分かったでしょう？」

「そうですね。青木さんの的確な質問で、何を求められているのかが少しわかったような気がします。」