ダブル~私が選ぶのはどっち~
8
「もしもし、慎。今終わったよ。」

私は会社を出て、慎に電話をする。

「えっ、今日は早いんですね。」

後ろで電車の音が聞こえる。

新人君たちはまだまだ定時で帰れる時期だから、もうとっくに慎は帰宅していると思っていた。

「俺、今日は会社を出るのが少し遅かったんですよね。それに寄り道していて…。」

「じゃあ、私はどうしたらいい?」

私は一旦足を止める。

「次の駅で降りて、琴乃さんの家の最寄りの駅まで行きます。」

「はい、了解。」

私はいつもの電車に乗った。

慎が呼ぶ私の名前に、少しほっとした。

-琴乃さん。-

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