ダブル~私が選ぶのはどっち~
転勤だからと説き伏せたつもりだったのに…。

「まさか、石原さんの方に連絡を取るとはね…。」

このままにしておく方が良いのか、それとも…。

私はしばらく思案したが、答えは出なかった。

「吉川、どうした?」

本社での上司、林陽介(はやしようすけ)に声を掛けられた。

林主任はあの草野主任と同期だ。

そして林主任は草野主任とまるで正反対の性格だ。

普段はのんびりしているが、その性格の良さで営業をこなしていた。

「すいません、ちょっと考え事をしていたものですから。」

私は見られたくないところを見られたようなバツの悪さを感じた。

「あの見積りの事なら、相談乗るぞ。」

私が抱えている案件にもちゃんと気にかけてくれている。

「ああ…、あの件でしたら、もうちょっとお時間を頂けますか?」

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