ダブル~私が選ぶのはどっち~
林主任は、いたずらっ子のような表情を私に見せた。

「そうですか。」

私はふっと目を伏せた。

「聞かない方が良かったか?」

林主任は、少し反省するような表情をした。

「いいえ、付き合っていた訳ではないんですけど…。」

私はそれ以上の事は言えない。

「草野がすごく心配していたぞ。あんな草野の声は初めてだった。」

そこへ電車が到着した。

「さっ、その話はこの辺で終わりにしましょう。草野主任にはとても元気に働いていると言って下さい。そして…。」

私はきつい目をして、林主任を見る。

「余計な事は言わないで下さい。」

林主任が電車に乗った後を私は追う。

「吉川ってさ、もっと素直になれば楽なのに。」

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