ダブル~私が選ぶのはどっち~
林主任はふわっと笑った。

「ここ1年の吉川を見ていると、ずっと何かに緊張しているように見える。肩の力を抜く必要があるんじゃないのか?」

「えっ?」

「時間も必要だろうが、自分で問題から逃げないで解決に向かっていく事も必要なんじゃないのか?」

林主任は今まで私の周りにいた男たちとは全く違うタイプのようだ。

さすが既婚者、少々は人間を見る目が肥えているようだ。

「自分を見つめ直すことで、何かが見えてくるんじゃないのか?」

私はハッとする。

「すまない、事情も分からないのに出しゃばったな。」

「いいえ、そうですね。私ももう少しちゃんと考えてみます。」

こんなに素直な言葉が私から出た事に、自分で少し驚いた。

「林主任って良い人なんですね。」

私は思わず林主任の顔を見た。

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