相沢!ベッピン鉄拳GIRL
俺、矢広 竜太の歩み。
ありがちな事だが、俺は子供の頃、
体が弱かった。それゆえに、いじめられっ子
で、両親を心配させた。

親以上に心配したのが、じいちゃんだった。

「このままでは絶対に良くない」

じいちゃんは『昔から不良、今も』と、
いうヤツで、ケンカに負けた事は無く、
近所で有名な地域実力者の一人だった。

風邪ひいて幼稚園を休んでいたのだが、治る
と同時に地獄の猛特訓が始まった。

信じられないほど険しい山に連れられて、
山菜取りとか、冬の寒いのに川に放られたり
とか。

よく風邪をこじらせてまた、両親が心配した。
じいちゃんは意に解さない。

小学校に上がると、仕事の手伝いもすることに
なった。

友達もろくにいなくて、別に遊びたい訳じゃ
無いけど、学校から帰って仕事ってのが、イヤ
だった。この頃の俺はグチグチ言う愚痴野郎。
(ちなみに仲原はこの頃を知る、数少ない一人)

まあ、グチる気力が出てきたってことだったの
だろうけど、ちょっとした黒歴史。其の一。

じいちゃんの手伝いで、機械いじりをして、家
の手伝いでレジ打ちや賄いをするうち、俺の
生活スキルはどんどん上がっていった。

そうすると、学校でも周囲の見る目が変わって
くる。いろいろ頼まれ事が来るようになった。

それらをこなすうち、俺はすっかり
デキるヤツとの周囲の認識を手に入れていた。

元々、サービス精神旺盛なじいちゃんは俺に、
我流のケンカ必勝テクを少しずつ伝授した。
ほとんどは封印された秘拳だったが、何となく
自信につながるというか、重しのようなもの。

小学校上学年になる頃には、病弱で、グチっぽ
かった俺は、前向きで明るく頑張り屋で有能な
ヤツ、と認識されるまでに変わっていた。

……そう、モテ期の到来である。

休み時間には、友達が席にたむろって冗談を
言い合う。
(仲原ともこの頃ダチになる。
『お前、えらく変わったよなー』と、話しかけ
てきた)
バレンタインには、チョコ持った女子が
ニコニコしながら、
『誰にと思うー?』とか言いつつ寄って来る。

モテるって、こういう事なのね。と、病弱で、
ヘタレだった自分をしっかり覚えてる俺は思う。

そしてついに、クラスで一番人気の女子に、
「付き合って下さい」
と、言われるまでになった。
答えはモチロン、OK!

順調な学校生活と思うだろ?

ところが、この交際は長く続かず、すぐに
別れてしまった。

しかも、交際を申し込んできた彼女から別れを
切り出された。why?

こう言っては何だけど、俺は彼女の事、大切に
したつもりだ。浮気はしない。まめに電話する。
誕生日も覚えたし、イベントは彼女優先。

「……何か、思ってたのとだいぶ違う」

それが彼女の言い分だった。えー?えー?
黒歴史、其の二の幕開けであった。
その後俺は、交際を申し込まれてはそれを受け、
振られるを繰り返した。

自分の何が悪いのか、ちいっともわからない。
でも、エンドですって言われたら、潔く引くしかない。

へこみ続けた。そしてまた両親を心配させた。

思い付いて、俺より世慣れしてそうな、仲原に
相談した。仲原は、

「断言は出来ないが、やはり、女心という
ものがよくわかっていないのではないか」

と、仲原の姉が寮生活をする際、実家である
仲原んちに置いてった少女漫画の単行本の束
を貸してくれた。研究材料らしい。

とりあえず読んでみる。

全くついていけないところもあるかと思えば、
俺っちと何が違うのと思うところもあり、
この少女漫画の束が、参考になっているのか
いないのかもよくわからなかった。

そうやって振られ君な俺の、交際未満ライフ
は中学生いっぱい続くのである。

……トホホ。

回想は続く。










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