相沢!ベッピン鉄拳GIRL
強くなりたい!
マサヨシが京子さんの鬼のシゴキを受け始めてから、一ヶ月が経とうとしていた。
学校の玄関先の廊下。
掃除道具をしまうマサヨシ。
最初は放課後、逃げて帰ろうとしたり、
廊下で目が合うと怯えたり、涙を浮かべてたりしたヤツも、自分の体調の変化を自覚し始めたようだ。
「最近、よく眠れるんです。それと、
ご飯がすごくおいしくて」
表情も明るいマサヨシ。……ははは。
そりゃそうだろう。あれだけ走らされ、
眠らず食わずだったら死んでると思う。
そろそろ本格的な修練に移っても良い頃だ。
そのくらい、マサヨシの変化は目ざましかった。
「俺、矢広先輩みたいに強くなれますか?」
「おおっ、やる気満々じゃん!モチロン!
おめーの努力次第では、不良君の十人や二十人、
モノともしなくなると思うぜ」
「……先輩。そうとう調子いいこと言ってますね。
非力な後輩相手に」
そう。簡単な事ではない。だが、現にマサヨシはもうカツアゲにはあわなくなっていた。
「そう言えばそうですね」
部活帰りのヤツらと束になって帰ったり、
途中で買い食いして、騒いだりしてたら
そりゃ、近付きにくいだろう。
「兄貴は何か言ってくるか?」
「最近、よく学校の事、聞いてきます。
先輩達の事が気になるみたいで」
ふっふっふっ……。岩佐よ、残念だったな。
京子さんと俺はラブラブで、マサヨシは
メキメキだ。お前の予想は丸ハズレ。
「マサヨシ、俺が俺の親父から伝えられた、
いにしえの強くなるまじないを、伝授してやろう」
「ええっ、何ですかそれ」
俺はポケットから油性マジックを取り出す。
生徒会室でポスター書き手伝ったとき使ったヤツ。
キュポン。
「わっ、わっ、何ですかっ!」
焦るマサヨシを壁に押さえつけ、眉間、
デコの真ん中のあたりに、
『肉』
と、一文字。
マサヨシは俺の手を振りほどくと、廊下にある鏡に猛ダッシュしていき、
「うわっ!何ですかコレっつ‼」
がく然としている。
さっきから何ですかしか言ってない。だが
反応が最高に面白くて、大声で笑ってしまった。
「はっはっは‼簡単に消す方法、知ってるけど教えない」
「そのくらい知ってますうっ‼」
マサヨシはポケットから4グラムパックのマーガリンを取り出した。
「え?そんなもの持ってんの?」
勝ち誇った笑みを浮かべるマサヨシ。
「休み時間に売店でコッペパン買って、ジャムだけ使ったんです。こんなところで役に立とうとは……」
「本当によく食うようになったんだな」
トイレの洗面所に走って行くマサヨシ。
「人に見られる前に、消さなければ。特に女子には見られたくない……」
ちぇ、なんだ、つまんねえ。
「お前さあ、ちょっと運気上がってない?」
トイレの前でキッと振りかえったマサヨシは、「そんなこと言って持ち上げてもムダですっ!
いじめですっ!先生に密告ですっ!」
と、本気で怒っていた。
その言葉どおり、次の日の朝、校門前で生活指導の藤岡先生に捕まった。京子さんとラブラブ登校中。
「矢広、お前、政美を助けといて、自分がいじり倒してどうすんだよ」
一応、助けたのは伝わってるらしい。
いじり倒しているのは、俺より京子さんだと思うのだが、
京子さんは捕まった俺、ほっぽって教室へ行く気だ。
あっ、待ってっ……。
藤岡先生はさわやかだが、そのさわやかさで、説教が長い。
俺は登校中の皆様にジロジロ見られながら、こってりしぼられたのだった。
タハッ。
学校の玄関先の廊下。
掃除道具をしまうマサヨシ。
最初は放課後、逃げて帰ろうとしたり、
廊下で目が合うと怯えたり、涙を浮かべてたりしたヤツも、自分の体調の変化を自覚し始めたようだ。
「最近、よく眠れるんです。それと、
ご飯がすごくおいしくて」
表情も明るいマサヨシ。……ははは。
そりゃそうだろう。あれだけ走らされ、
眠らず食わずだったら死んでると思う。
そろそろ本格的な修練に移っても良い頃だ。
そのくらい、マサヨシの変化は目ざましかった。
「俺、矢広先輩みたいに強くなれますか?」
「おおっ、やる気満々じゃん!モチロン!
おめーの努力次第では、不良君の十人や二十人、
モノともしなくなると思うぜ」
「……先輩。そうとう調子いいこと言ってますね。
非力な後輩相手に」
そう。簡単な事ではない。だが、現にマサヨシはもうカツアゲにはあわなくなっていた。
「そう言えばそうですね」
部活帰りのヤツらと束になって帰ったり、
途中で買い食いして、騒いだりしてたら
そりゃ、近付きにくいだろう。
「兄貴は何か言ってくるか?」
「最近、よく学校の事、聞いてきます。
先輩達の事が気になるみたいで」
ふっふっふっ……。岩佐よ、残念だったな。
京子さんと俺はラブラブで、マサヨシは
メキメキだ。お前の予想は丸ハズレ。
「マサヨシ、俺が俺の親父から伝えられた、
いにしえの強くなるまじないを、伝授してやろう」
「ええっ、何ですかそれ」
俺はポケットから油性マジックを取り出す。
生徒会室でポスター書き手伝ったとき使ったヤツ。
キュポン。
「わっ、わっ、何ですかっ!」
焦るマサヨシを壁に押さえつけ、眉間、
デコの真ん中のあたりに、
『肉』
と、一文字。
マサヨシは俺の手を振りほどくと、廊下にある鏡に猛ダッシュしていき、
「うわっ!何ですかコレっつ‼」
がく然としている。
さっきから何ですかしか言ってない。だが
反応が最高に面白くて、大声で笑ってしまった。
「はっはっは‼簡単に消す方法、知ってるけど教えない」
「そのくらい知ってますうっ‼」
マサヨシはポケットから4グラムパックのマーガリンを取り出した。
「え?そんなもの持ってんの?」
勝ち誇った笑みを浮かべるマサヨシ。
「休み時間に売店でコッペパン買って、ジャムだけ使ったんです。こんなところで役に立とうとは……」
「本当によく食うようになったんだな」
トイレの洗面所に走って行くマサヨシ。
「人に見られる前に、消さなければ。特に女子には見られたくない……」
ちぇ、なんだ、つまんねえ。
「お前さあ、ちょっと運気上がってない?」
トイレの前でキッと振りかえったマサヨシは、「そんなこと言って持ち上げてもムダですっ!
いじめですっ!先生に密告ですっ!」
と、本気で怒っていた。
その言葉どおり、次の日の朝、校門前で生活指導の藤岡先生に捕まった。京子さんとラブラブ登校中。
「矢広、お前、政美を助けといて、自分がいじり倒してどうすんだよ」
一応、助けたのは伝わってるらしい。
いじり倒しているのは、俺より京子さんだと思うのだが、
京子さんは捕まった俺、ほっぽって教室へ行く気だ。
あっ、待ってっ……。
藤岡先生はさわやかだが、そのさわやかさで、説教が長い。
俺は登校中の皆様にジロジロ見られながら、こってりしぼられたのだった。
タハッ。