相沢!ベッピン鉄拳GIRL
岩佐、リベンジの野望。
「なあ、岩佐。マサの父兄ってことで部活、
見学にきたら?」
京子さんが、岩佐に言った。岩佐は、

「はア?何をどう見学すんだよ。見るとこなんて
なんもねえじゃん!」
とか、言ってたんだけど。






……。



「相沢がどうしてもっつーから、来てやったぜ」
ハッ、と、前髪をあおる。

貴塚ヶ原高校、体育館である。
岩佐はいつもの偉そうな笑顔。
しかも、新品のスポーツウェア上下で
雰囲気に馴染んでる。

「イヤ、どうしてもとは言ってない。
『時間に余裕があれば』って」
柔道着の京子さん、腕組みで答える。

「はッはッはッ‼超ヒマだ!」
両腰に手当てて笑う岩佐。
……大学サボってるもんな。

離れたとこにマサが座ってる。
真剣な表情。
啓一郎が来た事にはまだ気付いてないようだ。

先輩に呼ばれて行ってお辞儀。構えた。
なかなか様になってる。

けど、やっぱりすぐ倒される。
起き上がって指導を受ける。
足を掛けられた時の避け方、
相手のつかみ方、バランスを崩した時の倒れ方。

マサヨシは神妙な面持で、
うなずきながら聞き、先輩に習い、試す。

啓一郎をみると、そんなマサを食い入るように眉間にシワよせて見てて、

「…………イラつくわあ……なんだ、あのヘボさは」
兇悪な声でつぶやく。

お気に召さないようだ。
おや?

「来たな。ほんとにやるのか?」
「そうみたいだぜ?」
「結構ガタイいいな、大丈夫なのか?」

部員が数人かたまって小声で何か話してる。
何の相談?

「アレだろ?相沢さんにヤキ入れようとして、
逆にヤられたヤツなんだろ?」
「何でそんなヤツがここに……相沢さんも変わってんなあ」
「マサヨシの親が再婚してアイツ兄貴なんだと」
「それで……?あんなヤツに?」
「世間は狭いってホントだな」

微妙に情報違うけど、啓一郎のことだ。

「なあ、ちょっとキミら」
俺が話しかけようとしたとき、
マサが啓一郎に気付いて寄って来た。

「わあ、啓一郎さん!来てくれたんだ!」
ほっぺた上気して、汗で髪の毛ささくれてる。
話してた奴らはその場を離れてしまった。

岩佐は機嫌悪い。
「ヘボが!やっぱお前に道着とか
似合わねー!全然なってねえ‼」

どう考えてもマサの事、やっかんでる。
ほんのり充実した生活をおくっているマサ。
しけたサボり生活の啓一郎。
生命感の違いははっきりしてる。

「大体、お前はな……」
説教しようとしている、その時……。

『臨時の校内放送です。体育館にて
貴塚ヶ原高校、現 格闘部総括、
相沢 京子対
日延ヶ丘高校、元 運動部総括、
岩佐 啓一郎の試合を行います』

周りが一気に騒がしくなった。

えー……。
……聞いてないよ。やりそうな事だけど。

岩佐の目が異様にギラつく。
「へええ……。『サプライズ』ってワケか。
そう来なくっちゃな……」

『この試合は、部活の余興であり、
公式戦ではありません。
繰り返します。本日只今より……』

周囲に人だかりが出来つつある。
場所が空けられマットが敷かれた。

そんな賑わいの中で、
軽く身体をほぐしている京子さん。

「もうすぐ引退だから。ちょーっと盛り上げとくかなーとか、思って」

「ちょーっとじゃないでしょ、もー!」
そーゆー事は、事前に俺にも相談してー!
岩佐の野郎、何かしやがったら飛び出して行って、回し蹴りかます!

岩佐が歩み出ると、集まった観衆から
お決まりの?ヤジが飛ぶ。

「勝てるわきゃねーぞ!」
「返り討ち野郎‼」

「うるせえッ‼」
響き渡る一喝。
アラ。岩佐君、すっかりヒール気分ね?

岩佐と京子さん、向かい合い軽くお辞儀。

間を開けずいきなり京子さんの衿をつかむ。
京子さんそのまま身を返しつつ、
相手の身のうちへ。
岩佐の二の腕と肩をつかんで、……投げた

バンッ‼
……いい音……。はええ。なんじゃ今の。

いつの間にか審判役の生徒が出てきて、
「一本‼」
と、旗を振る。

呆然とする岩佐。

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