相沢!ベッピン鉄拳GIRL
一年坊、救出。
……さすがに、言葉に詰まってる。

京子さんは、ウチの学校の格闘系運動部を、
結束の固い、前向きなものにまとめあげた。
結果、ウチの学校は運動部全体が強くなってきた。

それは良かったのだが、順位が落ちた他校の
不良に目を付けられ、襲撃にあった。

俺がちょうど通りかかって助けたから
良かったようなものの、そうじゃなかったら
危ないところだった。

俺は、もっと強くなって、京子さんを守ると
決心した。

京子さんは顔をあげて俺を見た。
「けど、竜太、この状況を放置して、タカられてる子を見捨てたら、それこそ格闘家の精神にもとるんじゃないか?」

そう。ガラの悪い奴らに囲まれているのは、
どう見てもウチの学校の一年坊。

貴塚ヶ原高校は、一年生には休日も
制服の着用を義務づけている。が、
守るヤツなんてほとんどいない。

いるとすれば、補習か部活に出る生徒だ。

あれはどう考えても前者。

ここはちょっとカッコよく、
「じゃあ、俺が行きます。奴らとナシ付けますから、
ここで待っててください」
そう言って、俺の鞄を渡す。

それを受け取ろうとした瞬間、京子さん、
「あっ」
と言って、鞄を自分のごと、またもや
道に落とした。

見ると、ウチの一年坊がボコられている。

補習で、カツアゲで、ボコられ。
不運の連続としか言いようがない。
なんじゃ、あやつ。

「あ……いつ……らあ……っ」
言うが早いか、猛ダッシュをかます京子さん。
住宅地の道路に向かって、
芝のような、なだらかな草地をかけ降りる。

こういう展開になるのは、予想できた。
正義感が強いうえ、腕に覚えがある。
親父さんが京子さん置いてったのも解る。

俺達って、実は似た者同士かも。

二人分の荷物持って、追いかけダッシュ
かます俺。
自分でも驚くほど体と心は静か。

京子さんに追いつきざま、鞄をトンと渡す。

驚いて止まる京子さん。

俺、さらに加速してカツアゲの輪へ突進する。
ガラワルの人数は三人。
ざっと奴らの力量を値踏みする。

ケンカセンサー作動中。

ヤツらガタイがいいわけではナイ。
強いヤツ特有のオーラが出てる訳でもない。

第一、目立つところで三人がかりでカツアゲ。
弱いのがワルぶって自分らに酔い、
ちゃちい団結、固めてるだけ。

勝てない相手ではありません。
しかし、数は三人。油断は禁物。
注意事項を反芻する。
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