相沢!ベッピン鉄拳GIRL
意外な再会?
高級住宅地の真ん中に、ひときわ大きな
洋館風の建物がある。

「あ、見えて来ました。あれです」

……マジかよ。門も、でかい。
鍵はかかってなかったが、犬が数匹、
走って来た。

カツアゲられは、飛びかかってきた犬で
団子になり、かじられてんのかと思いきや、
慣れたあしらいで、
「ちょっと待ってて下さい」
と、犬団子の中から言いつつ、そのまま歩いて
かなり広い庭の奥へ消えた。

「何だこの家。超絶金持ちっぽい?」
確かに住む世界違うわ、こりゃ。
え?こっちの意味だった?

犬団子外して戻って来たカツアゲられが、
「せっかくですから、お茶でも」
と、玄関まで案内し、ドアを開けようとした。

――その前に内側からノブが回り、ドアが開く。
若い男が顔を出した。そして言う。

「おお、相沢、矢広も、何だ?何故ここに?」

あれ?俺の事知ってる?この顔、どこかで……。

「えっと、誰だっけ?」
と、俺。

「オレだ、矢広。岩佐だ。岩佐 敬一郎」

「ああ!てめえ、ブラジャーの!」

ふっ、と目を伏せ、笑う岩佐。

「その事は忘れてくれ。相沢に対する
真実の愛と、こぶしで語る友情に目覚めた俺だ」

「ウソくせえ!」
と、俺。

「白々しいわね」
と、京子さん。

この野郎だ。逆恨みで京子さんを襲い、
単なる思い付きで、ブラジャー盗ろうとしたヤツ。
俺が叩きのめしたけど。

「ついでだから言っとくけど、俺達、付き合っ
てます」
ビシッと、ハッキリな!

「なんだと?そうなのか?」
目を丸くする岩佐。

「……ああ、そうだが」
と、京子さん。

岩佐は、京子さんだけドアの中に引き入れ、
……閉めた。

何やっとんじゃゴルア。
「てめー!岩佐、開けろやうるアー!」

ドアが開く。ひんやりした笑顔の岩佐。
「冗談だ。まあ、茶でも飲んでけや」

「あ、あの……。敬一郎さん……」
すっかり忘れられていたが、カツアゲられ。

「あ、マサミ、居たのか?お前は裏から入れ。
いつも言ってるだろ?シッ、行け」
アゴで示す岩佐。
カツアゲられ、マサミって名前か。

「住み込みの使用人の子だよ」

イヤイヤ、そんなわけないっしょ。

すごすごと、裏口へ回るらしいマサミ。

とは、別コース。玄関を入ると、だだっ広い
ロビーに、馬や虎の彫刻がゴロゴロ。

思わず、
「しゅ、趣味悪イー」
声に出して言ってしまった。

「……俺もそう思う」
ため息まじりの岩佐。

京子さんが聞く。
「さつきのマサミって子、弟か?」

「親父の愛人の子だよ。女は親父の子だって
言い張ってるけど、どう考えたって違う」
ケッ、と、くさる岩佐。
それから超大声で奥にむかって、
「マサミ、紅茶三つな!あと、洋菓子有ったろ
それも持って来い!応接間な」

遠くから、
「……ハイ」
と、返事がある。
マサミが超絶いじめられっ子オーラな理由が、
すっげえ解ってきた。

「岩佐のお母さんはどうしてるの?」
京子さんが聞く。

「長患いで、かなり難しい手術をしてさ、
二年前か。うまくいって治ったんだが、その頃
マサミの母親の事があって、怒って家を出ち
まった。今どこにいるのかも解ンねえ」
はー、と、息を吐く。

「オフクロが苦しんでる時に女だと。
おまけにばーさんと仲悪いかったんだ、
オフクロ。それも放ったらかし。そりゃ、
アイソ尽かすわ」

「岩佐君……」
両手で口をおおう京子さん。
目には涙を浮かべてる。

「岩佐君、可哀想。ママの愛に飢えてるのね。
だからアタシのブラジャー、あんなに欲しがって」

「ダアッ‼何の心理分析だそれ!
もおいいだろがその話は!……ああそうさ、
ウチは金は有るけど不幸な家の典型さ!
けど、同情するような女かよ?お前が!」

京子さんは……口を押さえたまま……。
――震え笑っていた。
「……あー、可笑しい。それって、あの子も
被害者じゃん?親に振り回されてるだけ。
アンタと同じ」

岩佐は憮然とした表情になり、
「何が解る?俺にとってはアイツも、
アイツの母親も、親父にタカるクソだ。
オフクロ追い出したヤツらだよ。」



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