治癒魔法師の花嫁~愛しい君に誓いのキスを~
 やがて、角笛の音が最後の余韻を空気に残して消えた時。

 誓いの口づけが終わって、なお、離し難いのか。

 何時までも抱きしめているラルフの手を、リーゼはそっと振りほどくと、彼の馬から滑り降りた。

 そして自分の着ている純白のドレスの胸元から裾まで一直線についている金具の紐を一気に引っ張ると、ドレスは簡単に脱げる。

 中には、ドレスと同じ純白の……けれどもしかし、かなり厳めしい軍服姿が出て来た。

 更に、リーゼが慣れた手つきで脱いだドレスをひっくり返す。

 すると。

 今まで、ふんだんに使われていたドレスのレースと飾りが消え、確かに高価そうではあるものの、どこから見ても男ものでしかないマントになった。

 これは、リーゼの家に伝わる変身マントだ。

 マントをひっくり返して裏地を出すと、自分の好きな服装に変わることができる魔法がかかっている。

 今回は、リーゼの願いどおり、ドレスの形をとっていたが、表にすれば、跡形も無い。

 大きさも、ドレスの時は、確かに足首まであったはずなのに、腰の所で終わっている。

 そして、リーゼ自身もまた。

 ドレスに包まれていた時は、確かになよやかな女性だったはずなのに。

 流行りに結った髪を解き。

 軍服に合う、短めのマントを着け直したその姿に、女性らしい弱さは、もはや無かった。

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