治癒魔法師の花嫁~愛しい君に誓いのキスを~
「俺は軍隊を動かす『用兵』については、誰より上手い自信がある」

 実際苦山ほどの激戦区ではないが、妖精族との小競り合いをしている地域に手助けに行き、砦の一つや二つは落としている実績があるのだ。

 個人の力は足らなくても、要は、最後の瞬間に、敵を丸のみに出来ていればいいんだと、ラルフは笑う。

「戦いを収めて無事に帰って来ることができたら、俺がシュヴァルツシルトの新当主だ。
 誰にも文句は言わせないぜ」

 先行きはそう暗くない、と。ラルフは胸を張ったけれども、リーゼは心配だった。

「他に……手段は……ないの?」

「心配すんな。
 何も暴力的な手段に訴えなくても良い。
 五十年の戦いは長すぎ、どっちの国も疲れてるからな。
 こちらが有利になるように終戦……とまでは行かなくても、話し合いで停戦まで持ち込めれば、それはそれで勝ちだ」

 言って、ラルフは片目を瞑った。

「それに、コトは国の問題ばかりじゃねぇ。
 俺の家と、リーゼの家の仲もものすごく悪い。
 家の方針に、直接口をはさめるヤツじゃないと、お前を正式に花嫁には出来そうにねぇんだ」

「ラルフ……」

 心配そうに自分の名前を呟くリーゼに、ラルフは溜息をついた。

「リーゼ。お前は、キレイだ」

「えっ!?」

 は、はずかしい……

 不意打ちで言われた「キレイ」なんて褒め言葉に、リーゼは顔を赤らめる。

 そんなリーゼが愛しいと、ラルフは、ぎゅっとリーゼを抱き締めた。
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