しょーとしょーと
「なんかしんどいなーって思って」
「微熱も結構つらいもんな。これでも食べて元気だして」
健一は切った桃の入った器を差し出した。
「ありがと」
受け取りながら、健一をちらっと見る。
「風邪って人にうつせば治るって言うわよね」
「なんだ、俺にうつす気か?」
「それもありかなーなんて」
冗談よ、と言いかけた桜は息を止めた。
健一がソファの背もたれに両手をつけて、その間に桜を閉じ込める。
壁じゃないけど、壁ドンみたいな体勢だ。
桜は背をそるようにして、精一杯距離を取ろうとするが、尋常じゃなく近い。
「け、健兄……?」