しょーとしょーと
と浩介はぎょっとした。
「な、なんかあったのか」
「あ、ごめん。なんでもない」
矢田は目元を手で拭った。
何もないようには見えない。
こういうときはどうしたらいいんだ?
残念ながら生まれてから16年、彼女がいたこともない浩介にはよくわからなかった。
例えば、友だちと大喧嘩したとか。
例えば、彼氏と別れたとか。
そういう想像ばかりが頭を駆け巡る。
ああ、もうどうすれば!
と思うよりも早く、体が動いていた。
矢田の肩をつかんで引き寄せる。
矢田の頭が浩介の胸に当たる。