しょーとしょーと
「さ、相模……?」
「なんかよくわからないけど、泣きたいなら泣けばいいよ。こうしてたら、見えないだろ」
言った途端、矢田が俺のシャツをつかんだ。
矢田の肩が震えている。
言葉にならない嗚咽が聞こえる。
浩介は黙ってそのままでいた。
どのくらいの間、そうしていたのか、花火の時間になったようだ。
花火が打ちあがる。
ドーンという音に矢田も気付いたようで、浩介から少し離れて顔を上げる。
「……綺麗」
「だなー」
花火が見えやすいように、傘を後ろに動かす。
浩介は花火を見上げながら、ポケットに入れたハンカチを取り出した。