しょーとしょーと
少し皺になっている。ないよりはマシか。
「ほら」
矢田にハンカチを差し出すと、矢田は「ありがとう」と言って受け取り、頬や目元を拭いた。
花火は次々と打ちあがり、真っ暗な空に大輪の花を咲かせる。
「今日、すっごく嫌なことがあったんだけど、花火見てたらどうでもよくなったかも」
「そうか、それは良かった」
「たぶん……相模のおかげもあるよね。ありがとう」
「お、おう」
泣き顔を見られて照れているのか、矢田の頬に赤みがさしていて、
浩介までむず痒い気持ちになった。
「まあ、なんだ。少しでも役に立てたんなら良かったよ」
矢田を抱き寄せていた間、
微かに触れる矢田の胸に、柔らかいんだな……と考えていたことは秘密だ。
(雨空の花火、終わり)