しょーとしょーと
晩ごはんを終え、食後のお茶を飲んでいると、祐基が真剣な目で言った。
何を言われているのか、理解できなかった。
というか、理解したくなかった。
「……わたしは、ここから出ていきたくないわ」
「圭吾との思い出があるのはわかってる。でも、いつまでも圭吾のことを思われてるのは俺も辛い」
テーブルの上にある彩音の手を祐基が掴む。
「祐基……」
圭吾のことを忘れきれない彩音が、祐基を苦しめていることには気づいていた。
それでも……。
「ごめんなさい。それでも、あの人がいつか帰ってくるかもしれないと思ったら、ここを離れることはできないわ」
「家を出てった最低な男なのに?」
「圭吾が自分から出ていったとは限らないわ!」
何も言わずに失踪しただなんて考えたくなくて、つい声を荒げてしまう。