しょーとしょーと
そんな、まさか。
そうは思うけど、足は紫陽花の元まで進み、しゃがみこむと、
紫陽花の根元を両手で掘り出した。
爪から血が出るのもお構いなしだ。
まさか、まさか。
彩音は去年の紫陽花の色を思い出せずにいた。
紫陽花が咲く直前に圭吾がいなくなり、庭を見る余裕なんてなかった。
庭は表玄関の裏側にあるので、意識していないと視界にも入らなくなってしまう。
紫陽花はちょうどリビングから見えない位置にある。
手で掘っているので、それほど深くは掘れなかった。
しかし、それは比較的浅いところにあり、彩音は見つけてしまう。
骨のようなもの。
「……ひっ」
驚きで、まともな声にならない。
「あーあ。だから庭はダメだって言ったのに」
こわごわと振り返ると、祐基が不気味な笑みを浮かべて彩音を見下ろしていた。
(紫陽花、終わり)