しょーとしょーと

そんな、まさか。


そうは思うけど、足は紫陽花の元まで進み、しゃがみこむと、

紫陽花の根元を両手で掘り出した。


爪から血が出るのもお構いなしだ。


まさか、まさか。


彩音は去年の紫陽花の色を思い出せずにいた。


紫陽花が咲く直前に圭吾がいなくなり、庭を見る余裕なんてなかった。


庭は表玄関の裏側にあるので、意識していないと視界にも入らなくなってしまう。


紫陽花はちょうどリビングから見えない位置にある。


手で掘っているので、それほど深くは掘れなかった。


しかし、それは比較的浅いところにあり、彩音は見つけてしまう。


骨のようなもの。


「……ひっ」


驚きで、まともな声にならない。


「あーあ。だから庭はダメだって言ったのに」


こわごわと振り返ると、祐基が不気味な笑みを浮かべて彩音を見下ろしていた。



(紫陽花、終わり)

< 47 / 99 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop