しょーとしょーと
夢を見ているようだった。
そのくらい現実味がなかった。
しかし、男は店員からナイフを抜くと、真っ赤に濡れたナイフを持って永実を見た。
目だし帽で表情はわからないというのに、男が笑っている気がする。
時間が止まったかのように長く感じた。
男が一歩、永実に近づく。
わたしも殺されて終わるのだろうか。
ナイフを見ているだけで、気が遠のきそうだ。
そんなことをぼんやり考えていると、何やらバタバタと打ち鳴らす足音を耳が拾った。
男も気づいたようで、バックヤードの出入り口を向く。
「ナイフを離せ!」
警官が2人、銃を構えて駆け込んできた。