しょーとしょーと

彼の連絡先を知らなければ、彼が普段、どこで何をしているのかも知らない。


何も知らないけど、付き合い自体は長い方だ。


エルクと出会ったのは小学校のときだから。


小学校から中学受験のために塾に通っていて、

その帰りにこの公園に通りかかり、エルクと知り合ったのだ。


エルクはこの通り目立つ容姿なので、

夜だというのに、まるで彼が光り輝いているかのように目を惹いた。


あの日は空なんて気にしてなかったけれど、恐らくは赤い月の夜だったのだろう。


一度出会っただけなのに、彼のことが忘れられず、それから度々、公園を訪れた。


たいていの日は会えない。


たまに会えるとそれは赤い月の夜だ、という法則性は何度か会ってから気づいた。


「美央、もうすぐだね」


エルクに頬をなでられ、過去を思い出していた美央は現実に引き戻された。

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