恋人が消えた瞬間
ふと、私のした事を思い出した。
家に帰るなりワンピースをビリビリに引き裂き、時計を机に起き、何事もなかったようにベッドに入った。
だが、それはただの逃避にすぎなかった。
「違うっ、違う違う違う違う!!あの人は殺されてなんかいない!!」
信じたくない。
信じられない。
信じない。
彼の物になる時計は私の手の中で未だ時間をすすめている。
「……そうだ……」
この時計が間違っているから、私は混乱したんだ。
まだ夢から覚めてないんだ。
この時計が悪夢の象徴なら、こんな時計いらない。
彼には別の時計をあげるんだ。
「いらない……こんなの、いらないっ!!」
反射的に私は窓を開けて、そこから時計を投げ捨てた。
時計は金色の光をわずかに煌めかせ、下へ落ちて動かなくなった。
時計は、止まった。
時間は………