恋人が消えた瞬間
絶望に覆われた嘆きは歪んだ憎しみを生んだ。
私の目は赤いワンピースの女に向けられる。
私の愛する人を消した女。
銀色のナイフを突き刺した女。
あなたを殺した憎い女。
あの女がいなければ、今頃私とあなたはあなたの誕生日を過ごしていた。
幸せな日だった。
それが暗い闇に落ちたのは――あの女が現れたから。
ねぇ、あなたも悔しいよね?
こんな所でどうでもいい女に殺されて。
だからね。
だから、私が仇をとってあげるよ。
それからもう一度この日をやり直すんだ。
もう忌々しい女は居ない。
今度は幸せな日を過ごせるの。
プレゼントもあげられるよ。
抱き合う事も出来るよ。
だからね…………。
少し、待っててね?
私はあなたの胸に突き刺さっている銀色のそれを握り締めた。
赤いワンピースを、更に赤く染める為、私は駆け出した。