気がつけば・・・愛
小一時間で推理小説を読み終えて顔を上げると
作務衣姿の住職が正面に座っていた
「・・・っ」
急に強く打ち始める鼓動
「偶然ですね...よくこちらへ?」
囁くような声を
唇の動きで確認すると
「あ、はい」
嬉しい気持ちが声に乗り
調節を忘れた大きな返事は周りの視線を集めた
ーーやだーー
全身の血液が顔に集まるかと思うほど熱く火照る頬
俯いて恥ずかしさを誤魔化しながら
耳まで赤くした自分に驚く
「中庭に出ましょう」
笑顔に促されて外のベンチに座ると
今度は心臓が口から出るかと思うほど高鳴る胸
ーーどうしたんだろう私ーー
偶然にも会えたことが嬉しくて
赤くなる頬より胸が苦しい
フワフワと浮き足立つ気分を
なんとか抑えながら
住職の話に耳を傾けた