気がつけば・・・愛
【もう、お終いにします】
そう言ったあゆみさんの声が何度も頭を過ぎる
あの日から
パッタリ届かなくなったメール
何度も携帯を開いては閉じて
ため息を吐く
あゆみさんは自分より
ご主人との人生を選んだのだ
喜んであげるべきなのに
どうしてもそれが出来ない
ーー自分は何をしているのかーー
あの日から止まったままの心
前に進めと呼びかけるけれど
立ち止まって動かない
ーーただのお坊さんになってしまったかーー
あれから
煩悩を鎮めるように
滝行にも進んで出向いた
道を外れた戒めに
時間の許す限り
御本尊の前で読経を繰り返す
でも
ふとした時に思い出すのは
あゆみさんの声
あゆみさんの笑顔
あゆみさんの匂い
「何やってるんだろう」
初めての感情と傷む胸の内を
搔き消すように住職としての仕事に没頭した