気がつけば・・・愛
「み、見ないで」

両手で顔を覆うと
その手首を掴まれる

「あゆみさんの・・・
笑顔も泣いてる顔も怒った顔も
全部見たいです。
だって、あゆみさんのことが
こんなにも大好きだから・・・」

真っ直ぐこちらを見る良憲さんの黒い瞳に
グチャグチャの顔を忘れて引き込まれる

「もう一度逢えたら
二度と離さないって決めてました
だから・・・」

そう言って足元へ落とした視線に
つられるように視線を移すと

「あっ」

裸足で砂まみれの足があった

驚いて見上げた良憲さんの顔は
真っ赤になっている


「法要のお見送りで・・・
あゆみさんの背中を見つけて
気がつけばそのまま走り出してました」


頭の後ろに上げた手が
恥ずかしいと物語っていて

それだけで胸いっぱいになる

法要の為の袈裟姿がカッコよくて
目の前の良憲さんに抱きついた


「・・・っ、あゆみさん?」

「良憲さん、逢いたかった」


胸に飛び込むと
止まったはずの涙が溢れてくる

ギュッと抱きつくと
良憲さんの手が背中に回されて
愛しい香りに包まれた


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