気がつけば・・・愛
看病
お寺の朝は早い
目覚まし時計に頼ってばかりの私は
夏も近付くこの頃は4時に設定している
いつもは最初のピピで起きて
アラームを止めて
心にお布団をかけ直して
こっそりベッドを抜け出す
それが・・・
今朝はアラームより前に起きてしまったようだ
そっと携帯を開いてボタンを押す
「・・・ん?」
覗いた携帯の画面がグニャリと崩れた
「・・・・・・(あれ)」
唇はそう開いたのに喉から声は出なくて
代わりに息苦しさを自覚してしまった
携帯を持ち上げた手も
普段ではありえない重さを感じて
手離してしまった
「どうした」
小さく聞こえたのは安心する良憲さんの声で
私の小さな変化にも気付いてもらえたことに胸が熱くなる
少し視線を移そうとしてみたけれど
重い目蓋は輪郭をとらえただけで閉じてしまった
その直後にオデコに感触があって
「熱いな」
良憲さんの声がさっきより間近に聞こえた
・・・熱なの?
少し息苦しい感じも
そういえば熱かもしれない
子供の頃から丈夫だけが取り柄だったから
熱を出した数も片手で足りるほど少ない
チュ
オデコにリップ音が立つと
「今日は一日寝てること
酷いようなら病院へ行こう」
もう一度良憲さんの声がした
「(はい)」
掠れた声は良憲さんに聞こえたかどうか分からないけれど
頭をゆっくり撫でてくれる良憲さんの手が心地よくて
いつしか微睡みの中へと落ちた
。
次に目を覚ましたのは
「・・・ん?」
「おはよ」
変わらずベッドの上で・・・
でも前回と違うのは
良憲さんに身体をガッチリとホールドされていたこと
それと、身体が楽になっている
・・・熱がさがった
「今、何時?」
「11時だよ」
「・・・・・・え?」
一体何時間寝ていたのだろう
オデコに冷えピタが貼られていることと
知らないうちにパジャマが変わっていること
なにより
脚先まで良憲さんと絡まっていて
ジワリと頬に熱が集まった
「ん?あゆみ、また熱が上がったかな」
そう言う良憲さんはいつもと同じ穏やかな笑顔で
でも、いつもと少し違うのは
その距離感
「心は?朝のお勤めは・・・?
えっと、朝ごはんと・・・」
頭を巡る色々
「朝のことは既に全部終わった
心は元気に登校したよ
今日は特に予定もないから
あゆみを看病してるんだ」
良憲さんの報告に少しホッとして
でも、最後の“看病してる”のところで
やけに力が入っていたことが気になった
それでもお礼はちゃんと言わなきゃ
「・・・・・・ありがとう」
間近の良憲さんと視線を合わせてみれば
「どういたしまして」
大きな瞳がなくなるほど
クシャッと表情が柔らかく崩れた
「さて、次は何しようかな〜」
語尾に音符が見えるような軽い声と共に
ガッチリとホールドされていた身体が解放された
「もう熱は無さそうだから〜」
そう言って身体を起こした良憲さんに
「ヒャ」
フワリと抱き上げられた
「りょ、うけんさ、ん?」
「ん?」
「どこに?」
「あぁ、これからお風呂」
「え?」
「あゆみ、沢山汗をかいただろ?
一度は着替えさせたけど
気持ち悪いんだろうな〜って」
そう言う間に既に浴室前に到着していて
あれよあれよと言う間に脱がされた私は
何故か?自分も脱いでいる良憲さんに
また抱き上げられて湯気の立つ中へと入った
こんな明るい日中にお風呂へ入るなんて初めてで
戸惑う私を膝の上に抱いたまま
鼻歌交じりにボデイソープを泡立てる良憲さんと目が合った瞬間
「看病してるんだよ」
と笑ういたずらっ子の様な笑顔に
これから起こるであろう色々を想像して目蓋を閉じた
。
「病み上がりだから・・・二回だけ」
「に、二回も?」
「だって、あゆみが可愛いのが悪い」
看病 fin