season
「…なあに?」



「ん?良かったなあと思って。ナツがちゃんと笑ってるから。」




その意味がわからず首を傾げると、春馬くんは言った。




「ナツを待たせることはしたくなかったのに。ナツはもう充分、待ってるヤツがいるだろ?なのに、俺まで待たせちゃ…な。」




「……………春馬くん…」





ダメだ、また。




また、春馬くんが私の心をこじ開けてくる。



春馬くんの優しさが、私を弱くする。





「…別に、待つのなんて慣れてるし。」




春馬くんから目をそらし、立ち上がろうとした、その時。




「待って。もうこれ以上、強がるな…」



またもや、手首を掴まれた。




「つ、強がってなんか…」




「ナツは強がってる。本当は弱いのに、一人で頑張ろうとしてる。でも、一人で頑張ろうなんてしなくていいんだ。ナツは一人じゃないんだから。」



「一人じゃ…ない?」




「そう。ナツはもう一人じゃない。俺がいるよ。」




もう、ダメ…




張っていたバリアが、破られて行く。




作っていた壁が、壊されて行く。




必死に耐えていた涙腺が、崩壊して行く。


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